新丸子駅西口から日本医科大学武蔵小杉病院(川崎市中原区小杉町1丁目)へと続く商店街「医大モール」の中ほど、あるお店の看板の上に時計がかかっているのをご存知ですか?
家へ、駅へと急ぎながら、買い物の途中に、あるいは子供と散歩中に、ふと見上げるこの時計、バーバーショップ小野さんの店先についているものです。
ご主人は2代目の小野基一さん。
商店街に面したハーフミラーのウィンドウには、基一さんのデザインしたキャラクターと一緒に <新しい自分との出会いはそう難しいことではないらしい―あなたひとりひとりにあった技術を―> と書かれています。
その人の髪をぬらした時に、髪質や癖などを見て、理容室できれいに仕上げるだけではなく、帰ってからも自分でセットしやすいようにカットされるそうです。
基一さんが、突然こんなことをおっしゃいました。
「チャンスの神様って知ってる?」
ごめんなさい、知りません。
「チャンスの神様には前髪があって後ろ髪が無いんだって。だからつかむのが難しいんだよ。」
なるほど、これはタイミングよくつかまなければ。
その他にも
「指先から愛を出す」
「人に嫌われないように」など、
インタビュー中にも基一さんの口からは人生における名言が飛び出します。
<ようこそこの街へ いかがですか> というウィンドウの言葉に誘われ、来店されたお客様もいらっしゃったと伺いました。
普段何気なく通っていたウィンドウ。ふと目にする言葉の大切さを感じました。
バーバーショップ小野の創業は昭和10年。
当時、医大モールにはお店も家もほとんどありませんでした。
以来、ずっと新丸子の発展を見続けてきた歴史ある理容室です。
「このあたりの碁盤の目に整備されているところは、東急の分譲地だったのです」
カメラ好きの基一さんが、当時のモノクロ写真を見せてくださいました。
緑の空き地ばかりののどかな風景の中に、小野さんのお店の白い壁がひときわ目立っています。
奥には日本医科大学の校舎も見えます。
先代のご主人が撮られた写真は川崎市の小冊子にも載るほど貴重なもので、新丸子周辺の歴史をうかがい知ることができます。
(つづく)
【訪問日 2011年11月22日】